【レポート】完全復活!松川ケイスケが届けた「おかえり」と「ただいま」。

こんにちは、motto編集部のオオウ(@ounco_coverdeath)です。以前、出演者による特集対談を行ったLACCO TOWER主催の音楽フェス『I ROCKS 2023(アイロックス)』。今回は、10年目を迎えた初日の模様を最速レポート。ライブ活動を一時休止していたVo.松川ケイスケの復帰公演は新たな試みとライブを掛け合わせて行われました。会場にいた方もそうでない方もぜひご一読を。

1. 会場全体を包み込む良きムード

筆者が到着したのは、開場の5時間前の正午。すでに外には多くのファンが列をなしていた。

17:00の開場に向けて急ピッチで設営が進められるなか、エントランスホールには過去に出演を果たしている『back number』『FOMARE』など同郷のバンドたちからの祝花が届く。

12月4日、松川ケイスケ(Vo)はライブ活動の一時休止を発表。その直後とは打って変わって、この日のメンバーの表情は飛び抜けて明るい。ピリついた様子もない。当の松川もサウンドチェックを終え「めっちゃ楽しいな」と細川大介(Gt)に声をかける様子もあり、表情もどこか軽やかだった。

彼らはメンバー間のみならず、この日を作り上げるスタッフたちとも密にコミュニケーションを取っていた。お馴染みのスタッフ陣ということもあり、一年に一度のお祭りを楽しんでいるよう。世間話や他愛もない会話もするなど、非常にリラックスしているようだった。リハ後には、会館の職員さんへ挨拶回りに駆けつける塩﨑の姿もあった。

余談になるが、今年はバックヤードには「見城食堂」なるケータリングのもてなしがある。3日間仕込みに割いたというカレーや豚汁が振る舞われ、お店顔負けの本格的な味わいで「美味しい!」と賞賛の嵐。残りの2日間、出演されるアーティストやスタッフ陣はぜひこちらも楽しんでほしい。

そんなこんなで時刻は17:00。オーディエンスの入場が始まった。今年は親子で参加されている方が特に多い印象。LACCO TOWERが「家」を冠し、ファミリーにも楽しめるフェスと銘打ってきたが故だろう。

そして、復活を果たした「I ROCKS BAR」もオープン。オフィシャルホテルの「ホテルサンダーソン」がおもてなしを担当。バックヤードの通路には細川のギターの音色が鳴り響いていた。

先日の対談で塩﨑啓示(Ba)が「今年のI ROCKSも良い日になる」と語っていたように、それを象徴するムードが表も裏も会場全体に漂っていた。それはまるで松川に対する「おかえり」のようだった。

2. I ROCKSに増えた「新しい部屋」

今年は会場内に「LIVING」なるスペースが出現。ここはメンバーが実際に使っている機材や衣装、お気に入りの本やゲームなど各々のこだわりが詰まった空間になっている。この日はライブ前にイベントがある旨がすでにアナウンスされている。

開場してしばらくが経ち、何やらLIVINGが騒がしくなってきた。塩﨑、重田の幼馴染コンビが登場だ。

どうやら大勢のオーディエンスを前にテレビゲームをやるのだという。まるで二人が過ごしてきた青春の一部を見させられているようで、これもまたファンには堪らない時間になるだろう。実際に彼らは中学生時代によくプレイしたという「ストリートファイターⅡ」で対戦をすることに。重田はどこか自身に通ずるものがある「ザンギエフ」、塩﨑は「リュウ」。初戦は重田の圧勝。再戦を望む塩﨑に対し重田は「まるごとソーセージとライフガード」を要求。塩﨑の「サガット」を重田は「ブランカ」で返り討ちにし会場を大いに沸かせた。

そうこうしているうちに松川、細川、真一の3人もLIVINGに入室。この後は居間のように自由なイベントに展開していく。早速、オーディエンスと交わした「おかえり」「ただいま」が室内に響き渡り、続けてゆるいトークも繰り広げられ会場の笑いを誘った。

重田・塩﨑のリズム隊が中学生時代に家でコピーをしていたというLINDBERGの「今すぐKiss Me」をジャムり、会場を一体感の渦に巻き込んだかと思うと、松川の朗読に合わせて真一ジェット(Key)が即興曲「メタン・ガス」を披露。もちろん噛み合うはずもなく、次の細川のターンへ。

細川は髪色と同じ色の新しいギターをお披露目。相方に松川を指名し、2人でTHE YELLOW MONKEYの「LOVE LOVE SHOW」を演奏。2人の後ろではソファーでノリノリな塩﨑が途中からベースを手に取り、重田もカホンを叩き出し、真一ジェットはマイクを握った。ボーカリストである松川がギターを弾くなんともスペシャルな時間となった。

そして、最後には恵比寿LIQUIDROOM単独公演10周年となる「独想復活祭」の開催がアナウンスされた。フェスに来ていることさえ忘れさせてしまう、非常に濃いイベントタイムとなった。

なお、4/8(土)、4/9(日)の二日間、来場者はLIVINGに自由に出入りが可能となり、さらに、レイアウトされている本や楽器に触れることができる。レイアウトされている衣装に袖を通し、記念撮影もできるとのことなのでぜひ立ち寄ってほしい。

3. 124日ぶり、約束のステージへ

楽屋にて最終確認を行うメンバー。おちゃらけ合っているかと思えば急に真剣な話し合いを始める「らしい」姿がそこにはあった。オンオフを切り替えてやるときはやる、そんな彼ららしさも愛されている理由の一つなのだろう。

オンステージを控え、袖にスタンバイする5人。壁に向かい発声練習をする松川、精神統一をする真一、メンバーを見つめる塩﨑、ここでもおちゃらける重田。そして、自身へのメッセージ「前を向け!(※目線をギターではなくフロアに意識的に向けろという意図)」と筆を取った細川。円陣を組み、「今日はお客さん皆んなを楽しませましょう!」と掛け声もいつも以上に力んでいた。

19:00。SE「狂想序曲」が流れ始めると、先ほどまでおちゃらけていたはずの重田の「行くぞ!」のひと声で空気は一変。メンバーが次々にステージへ飛び出していき、松川は細川と抱き合い「よろしくな」と声をかけた。

本編は松川の「ただいま!」とともにキラーチューン「薄紅」で幕を開けた。「もう歌えるのか?」という周囲の不安を払拭するパフォーマンスで、のっけからフロアのボルテージは最高潮に。どうやら松川の調子は良好らしく、完全復活を果たしたその姿に涙を流す人もいたくらいだ。

「一つだけお願いがあって、みんなには全力で楽しんでいってほしい」という松川のMC後にドロップされたのは「檸檬」。

細川のギターソロが炸裂した「必殺技」、真一ジェットの演奏によってその世界観に引き込まれる「嘘」「泥棒猫」を続けた。

ここで、想いが溢れた松川の口から言葉が紡ぎ出される。「124日前では想像できなかった景色が今目の前にあります。お医者さんからはもう歌うのは難しいかもしれないと宣告されました。機能性発声障害と診断され、当たり前のことができないようになっている自分に慣れてしまうのが本当に怖かった。それでも踏みとどまれたのは、四人囃子で続けてくれたメンバー、皆さんからの声援のおかげです。どうもありがとう。」松川にとって何よりも回復の「魔法」になったのはメンバーやラッ子からの愛。今度はまた彼らのライブや活動が誰かの「魔法」になって巡ってくれたらと思う。

終盤に向けてギアは一気に加速していき、無数の拳が突き上がった「化物」、フロア最後方までoiコールが沸き起こった「火花」と続く。超満員のフロアに放たれたそれらは、オーディエンスの感情を最高沸点まで到達させる。

漂う熱気に汗ばみながらも笑顔が溢れるフロアの様子に微笑ましくなった。嘘偽りなく、その光景はライブハウスそのものだった。

「めっちゃ楽しい!皆んなの声が聞こえるっていいな!」と松川も楽しげだ。「どんな大きなステージでライブをするよりも、この5人でステージに立てていることが最幸です。今日は本当にありがとうね。」と、ラストに届けたのは「若者」。順風満帆にはいかず、苦難の一年を過ごした彼らがこのタイミングで奏でるにふさわしい一曲だ。またここから、彼らの旅路は始まるという決意の歌にもなったのではなかろうか。

僕らは 変わるかな このままかな 悪くなるかな
最後の シーンはさぁ 夜の絶頂(ピーク)
光の下 そう決めてる
だから 最高は 君といる
夢のような 舞台の上で
たださ 目を合わせて 並んでいる この瞬間さ
ああ 夢ならば覚めないで
どうか ああ
どうか 覚めないで
〈若者/LACCO TOWER〉

本編終了後、声出し解禁ということもあり、アンコールのラッコ節も沸き起こった。各々が感謝の気持ちを伝え、そしてボーカリスト松川ケイスケの復活を喜んだ。

アンコールにはいつ何時も彼らのライブで披露されてきた「一夜」。

多幸感に溢れるフロアに10年ぶりに放たれたという特攻。実はメンバーにもサプライズで行われ、オーディエンスも配布されたサイリウムを手に会場を彩った。ステージを降りたメンバーたちの驚きを隠せない表情、そして嬉し涙を流す様子が印象的だった。

4. YOU STAGEで掴んだ確かな光

自分自身、ワンマンライブだからこそ、過去の曲も求めてしまうことがある。けれでもLACCO TOWERは先日の対談でも語られていたように常に進化を続けているバンドだ。

毎年同じことを繰り返そうとはしない「飽きさせないおもてなし」の精神からきているのだろう、I ROCKS初日、ワンマンでは「現在進行形」のセットリストで臨んだのだと思う。今、彼らがどんなセットリストでも勝負をできるのは、20年というキャリアの中で培ってきた「挑戦し続ける精神」故だろう。

気づいた人もいると思うが、この日の細川は曲ごとにギターチェンジを繰り返していたが、1曲目の「薄紅」以外、全曲レフティでやってのけたのだ。もちろん、「必殺技」や「火花」など、テクニカルな演奏も。「左右併用していく」と宣言してから1年も経たずして、ほぼ逆手でやり遂げるストイックさに感動した。

そして、2019年ぶりに戻ってきたYOU STAGE。彼らが掲げてきた現場至上主義の精神を映し出すように、確かにそこにあったのはライブハウスだった。今年に限っては、「あの景色」を「取り戻す」上で、I STAGEではなくYOU STAGEでのワンマンは非常に意味のあるものになったと思う。コロナ禍でも歩みを止めなかったI ROCKSをさらに一歩先へ進めるためのステージになったからだ。間違いなく、この光景は彼らにとっても一種の希望になったであろう。

そして何よりも、ボーカリスト松川ケイスケの復帰した姿を拝めただけでも目頭が熱くなるものがある。隣で躍動するメンバーも然り、フロアから嬉しそうに眺めるオーディエンス然り。「バンドが楽しい」と素直に言い合える、そんな彼らの固く結ばれた絆もまだまだ見ていたい。どんな困難にぶち当たろうとも、我々リスナーをワクワクさせ続けてくれる彼らのことをこれからも愛し続けたいと思う。

I ROCKS 2023
4/7【LACCO TOWER】セットリスト
SE.狂想序曲
1.薄紅
2.檸檬
3.必殺技
4.嘘
5.泥棒猫
6.魔法
7.化物
8.火花
9.若者
EN1.一夜

PROFILE
LACCO TOWER(ラッコタワー)
2002年、伊勢崎市出身のメンバーを中心に結成。2015年『日本コロムビア(トライアドレーベル)』よりメジャーデビュー。「ドラゴンボール超」「ザスパクサツ群馬」「伊勢崎オートレース」など、数々のタイアップソングを手がけるほか、地元である群馬県にて2014年からロックフェス『I ROCKS』を主催している。
[WEB]https://laccotower.com/
[Twitter]@LACCO_TOWER

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I ROCKS 2023特集(後編)

▼クレジット
出演/LACCO TOWER
撮影/鈴木公平、藤川正典、藤村聖那
文/佐々木覆(troisdesign)

※掲載情報は取材時と変更になっている場合もあります。最新の情報は公式HP・SNS等にてご確認ください。

【4/7〜4/9】I ROCKS 2023

[所在地]
伊勢崎市昭和町3918(メガネのイタガキ文化ホール伊勢崎)
[TEL]
0270-23-6070
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