【インタビュー】I ROCKS 2023特集(後編)

こんにちは!motto編集部のオオウ(@ounco_coverdeath)先日公開したインタビュー(前編)では出会いであったり、初開催のときのことについて語り合ってもらいました。その中で、I ROCKSというフェスがアーティスト、ひいてはスタッフ陣からも愛されているという根幹の部分が見えてきたような気がします。後編となる今回は、初開催からそれぞれが歩んだ10年間を追うとともに「これから」について語ってもらいました。群馬のバンドによるロックフェスとして立ち上がったI ROCKSが向かうその先とは。『I ROCKS 2023(アイロックス)』の開催を記念して、出演が決まっている5アーティストにこれまで語られることのなかった本邦初公開のエピソードを交えて語り合ってもらいました。

対談参加者:塩﨑啓示(LACCO TOWER|Ba)、柿澤秀吉(秀吉|Vo&Gt)、堀越颯太(KAKASHI|Vo&Gt)、狩野太祐(oldflame|Vo&Gt)、ガッツいわせ(吉本興業|お笑い芸人&DJ)

1. それぞれが歩んだ10年間

──10年という歳月は皆さんにとっても、お客さんにとっても環境の変化をもたらしていると思います。進学、就職、結婚、子育て、引越し・・・挙げればキリがありません。開催初年度からの10年間、それぞれ変化はありました?

いわせ  よしもと住みます芸人の「群馬県住みます芸人」に就任とともに、2019年に地元である群馬県に戻ってきた。そこからI ROCKS以外にも県内のイベントや講演に呼ばれることが増えたね。

塩﨑  10年って色々あるよね。I ROCKSもそうだし、バンドだってそう。ラッコについて言えば、2016年以降は「ドラゴンボール超」や、「ザスパクサツ群馬」「伊勢崎オートレース」などがきっかけで俺らのことを知ってくれた人がたくさんいたんだ。それこそ、ザスパのサポーターたちが試合終わりにユニフォームのままライブに駆けつけてくれたりなんて景色もあった。多種多様な人と関わることで、良い意味で視野を広く持てるようになったと思う。

堀越  俺は・・・少し赤裸々に話します。KAKASHIを10年続けてきて、動員は増えない、何年もリリースがない、目に見えた結果がついてこない。実は昨年末、今のままバンドを続けるのは終わりにしたいって考えていました。そんなモヤモヤを抱えたまま12月16日、O-Crestでライブをしたんです。終演後にムロさん渋谷O-Crest店長)に呼び出されて「惰性でやっているなら、バンドなんか辞めちまえ」って怒られたんです。見透かされたと思ったと同時に、ものすごく芯を突いていて、きちんと向き合わなきゃって思いました。

──その後はどうなったの?

堀越  これまでKAKASHIって、メンバーの足りないところとか目を瞑ってなあなあでやり過ごしてきたバンドなんです。でもムロさんの一言で、今後のことについてちゃんと腹を割ってメンバーと話し合うことにしました。「1人でもなあなあで続けるなら俺は辞める。そこに甘えないで、4人で本気でやるなら続けたい。」って伝えたら、佑介(KAKASHI|Dr)が「俺はやりたい」って即答してくれて。中屋敷(KAKASHI|Ba)も「技術的なところで不安はあるけど気持ちはやりたい」でした。まさ(KAKASHI|Gt)に関しては「俺はやれちゃうんで」と。結果的に、4人で本気を出して続けていくことになりました。配信シングル「やめろよ/られる」をリリースしますし、東名阪でツアーで企画ライブもあります。俺ら、今が一番燃えてますよ。

塩﨑  KAKASHIに関しては本当に同じ境遇だったり近さを感じている。意図せずにラッコの足跡をたどっていると思うし。

狩野  僕らは初出演が2019年で、2020年(開催は20&21名義)も続けて声をかけていただいて、ようやく仲間入りできたと思っていました。でも、2022年は出ることができなくて、メンツを見たときに悔しさもあったけど正直仕方ないとさえ思えました。啓示さんからは「I ROCKSをゴールにしないでほしい」って言われていたんですけど、気づいたらI ROCKSはオルフレにとってのゴールになっていたんですよね。結果を出さなきゃと思い、そこで自主企画『aisuru.FES』を開催することを決めたんです。

塩﨑  2021〜2022年は情勢的に全然ライブを観に行けなかった。新しい風を吹かせてくれそうなyouthThe Gentle Flower.もフックアップさせたい気持ちも強かったけど、今年は『aisuru.FES』をやり遂げたオルフレに出てもらうことにした。ラッコの水戸のライブが終わってからそのまま会場の前橋DYVERに駆けつけたんだよね。「やりたい」という気持ちを形にしたことは素直に褒めたいし、その気持ちと行動力があれば一緒にI ROCKSを盛り上げてくれると確信したからね。

柿澤  うちらは初年度から皆勤だったけど去年、初めて出演を辞退させてもらいました。2021年の春くらいにback numberチームからツアーサポートをしてほしいと連絡がありました。「スケジュール大丈夫?」と聞かれたのですが、それが2022年のI ROCKSと被っていて。「一人だけ一報を入れたい人がいます」と伝えました。

塩﨑  依与吏(back number|Vo&Gt)からすぐに電話が来た。もちろん、それが秀吉にとって最善だと思ったから快く受け入れたよ。

柿澤  back numberのツアーに参加させてもらって、ものすごく長い付き合いで仲は良いけど、バンドの中のこととか全然知らなかったんだと痛感しました。

堀越  ツアーサポートを終えてからの秀吉がまじで別物のように写って見えていますよ。規模感だったり精力的な活動だったり。

柿澤  何かを意識して変えたこととかは特にないと思っているんだけど、依与吏さんが抱えているものに触れて、少なからず自分にも影響を与えたんだと思う。意図せず変わった部分とかはあるのかもしれないね。ツアーサポートが終わって、実はアルバム3枚分くらいの曲ができているのね。神保くん(秀吉|Dr)もバンドに還元したいといって茂木さん(G-FREAK FACTORY|Vo)と「茂木洋晃トリオ」として活動している。一昨日、松井さん(BOØWY|Ba)とお会いした際に、「町田くんも神保くんも良い顔でライブするようになったよね」と褒めてもらえたしバンドのムード的に良い感じかも。そんな秀吉も来年で20周年!

塩﨑  この長いキャリアの中で進化できるって普通じゃできないよ。龍哉も神保くんもポテンシャル高いから、きっとヒデのみなぎる何かを感じ取っているんだろうね。3人がいつの間にかグッと良くなっていて、今年のI ROCKSでのライブも期待していいと思う。

2. フェスの進化と変わらない芯の部分

──初年度から携わらせてもらっているので、I ROCKSは常に進化し続けているフェスだなと感じています。それこそ、毎年同じものをこなすのではなく、イベントの内容も関わるスタッフたちにも「去年を超える」という使命が与えられているんですよね。進化し続けているからこそお客さんも飽きないのだと思います。目に見える変化で言えば、会場が高崎から伊勢崎に移ったことでしょうか。

塩﨑  「いつかは地元・伊勢崎で」と思っていたものが少し早まっただけだと思っている。群馬音楽センターで2020年に予定していた公演がコロナの影響でリスケを繰り返し、希望の日程では会場を押さえられないとなって。そのときに力になってくれたのが伊勢崎市文化会館(メガネのイタガキ文化ホール伊勢崎)だった。20&21は2020年にオファーさせてもらった出演者全員に連絡して、無理を言ってスケジュールを合わせてもらった。会場こそ高崎から伊勢崎になったけど、根の部分は変わっていないと思っているよ。これがきっかけで「I ROCKS BASE」もできたわけだし、お客さんと接点を持てる場所を見つけられたのは大きいなと。

いわせ  良くも悪くも、コロナ禍での開催を経て、I ROCKSが様々な角度からフェスの楽しみ方を教えてくれたように思う。それはお客さんに対してだけではなく、自分たち出演者もそう。今では騒ぐことだけがライブの楽しみ方じゃないと思えるし。

塩﨑  最近はキッズ向けのイベント「KIDS ROCKS FAIR」なんかもやったりしているんだけど、3〜4年ぶりのお客さんや出演していたami(Sourire|Vo)、mottoのちゃんさやが子供を連れて会いに来てくれたんだよね。10年あれば環境だって変わるのが普通だと思う。俺らはそういった人たちにもまた来てもらいたいと思っているから、どうやったら楽しんでもらえるかを考えるようにしている。だから、I ROCKSを始めた頃のロックキッズたちが騒ぎに来れる場所からは少しずつ変化していると思う。

──音楽が主ではあるけれど、「I ROCKS GARDEN」にキッチンカーが集うなど、お客さんに大切な一日を過ごしてもらいたいというスタンスはブレていないですよね。だいぶ定着してきましたが、「ただいま」「おかえり」という言葉が飛び交うフェスも珍しいと思います。皆さんはどのように感じていますか?

柿澤  I ROCKSが変わろうとしてるムードは僕たち出演者も感じていましたよ。ライブハウスのようなイベントからアットホームな感じに。それこそ「また帰ってきてね」というスタンスとか。

いわせ  KIDS ROCKSが始まってから、会場の雰囲気もアーティストのライブも変わったなって感じています。尖りまくっていたIvy to Fraudulent GameやKAKASHIは、温もりさえ感じさせてくれるライブができるようになってきているし。俺らも会場に合わせて必要とされるために何ができるかを考えているし、変わってきていると思う。

堀越  I ROCKSに関しては、ザスパのサポやファミリーなど明らかにライブハウスでは見かけないような層が急激に増えたと感じています。俺らもせっかく来てもらったお客さんを置いてけぼりにするわけにはいかないなって思います。

塩﨑  でも、マインドはライブハウスでいてもらって良いと思うよ。普段ライブハウスに来ている人たちにとっても、ホールライブって特別な1日にもなるわけだから。フェスって来てくれる人たちは様々だし、結局刺さる・刺さらない色んな反応があって当たり前だし。I ROCKSがきっかけで、アーティストのグッズが売れたりライブハウスに足を運ぶようになってくれたりしたら本望だね。

3. I ROCKSの未来、掲げる約束

──大好きすぎるが故に皆さんが描く理想のI ROCKS像ってありますか?また、今年はどんなライブにしたいと考えていますか?

堀越  I ROCKSもラッコもどのように変化していってもらって構わないです。だから変わるところも、変わらないところも全部任せます。ついていきますので!俺らみたいな人気のないバンドがしぶとく続けていくことがみんなのパワーになるって思うんです。初年度にトップバッターを務めたKAKASHIが今年も同じ位置を任されたということで、俺ら的にも初心にかえり「あのときの景色を取り戻しに行く」という気持ちでやらせてもらいますよ。

柿澤  想いもすべて伝わっています。だから、その時々で感じたように変わっていってほしいですね。バンドとしては去年出られなかった分、多くは語らないけど、今の秀吉を観に来てみてほしいですね!

狩野  初めてステージに立ったときの景色は一生忘れられないので、胸に刻みながら精一杯ライブします。ラッコやI ROCKSは色々な活動をしてくれていることが僕らにとっての希望になっています。自分たちもやっていいんだって学ばせてもらっているので、これからもよろしくお願いします!

いわせ  啓示さんの「何かやってほしいんだけど」という無茶振りから開場前のラジオ体操が始まり、今では名物企画のようになったんだよね。個人的にはあれがあることで当日のステージの持っていき方とかを掴めるので本当にありがたい。お客さんの熟練度・順応性も年々上がってきているし、初めて来るという人もぜひ開場前から来てほしいです。芸人や表に立つ人は感情を出してはいけないと思っていたんですけど、ラッコは包み隠さずずっと見せてきてくれたと思うんです。「群馬のバンドで作るフェス」から「年に一回戻ってくる家」に、そして去年のJAMのような1日も経て新たなフェーズが見えてきたのかななんて感じています。今年は、ただ単に盛り上げるのではなく、お客さんに「グッとくる」瞬間を与えたいなと。そのために一年間かけてどんな日にしようかぐるぐると考えています。

塩﨑  アーティストだから本当は格好つけたいけど、俺らは誤魔化せなかった。だったら真っ直ぐにみんなに伝えたい。去年は7月18日のライブで大介のジストニアの件も公表させてもらったし、12月4日のライブではケイスケの口から喉の症状についても告白させてもらいました。そして、またI ROCKSの日に戻ってくると約束も。20年間バンドが止まることはなかったけれど、メンバー4人でケイスケが戻ってこれる場所を守ろうと誓いました。今日集まってくれたみんなが話してくれた言葉やお客さんの声が確実にI ROCKSの原動力になっています。正直、今年の開催が過去一番で苦しいんだけど、今日の対談が良い日になることを証明してくれたように思います。これからもI ROCKSはみんなが良い思い出を持って帰れるように変わっていきますよ。笑顔や感動、あのときのキラキラ感を取り戻しましょう!

4. 今年のテーマは「取り戻そう、あの景色。」

2023年のI ROCKSは「取り戻そう、あの景色。」をテーマに開催されます。
一つは、ボーカリスト松川ケイスケ(LACCO TOWER|Vo)の復活の場として。喉の不調から歌唱を伴う音楽活動休止中の彼が必ず完全復活で戻ってくると約束した公演。きっと観ている側も感情がぐちゃぐちゃになりそうですが、ラッコのフロントマンとしてケイスケさんのステージに立つ景色が帰ってきます。そして、YOU STAGEの復活。オールスタンディングでライブハウスの熱気そのままに感じられるI ROCKSの第二のステージ。スタンディングもホールも両方楽しめるのがI ROCKSの良いところですよね!ホールは指定席なので疲れたらゆっくりできますし。まだまだあります。ついにスペシャルバンドも復活です!I ROCKSに出演する面々がこの日限りのバンドを組みます。あのアーティストやこのアーティストが1つのバンドに!出演者が楽しそうにJAMってる感じが本当に最幸なので要CHECKですよ!親子のためのKIDS ROCKSも復活!I ROCKS BASEをはじめ、開催日までに親子で楽しめるイベントの実施のほか、キッズたちも楽しめるよう小学生以下のお子様と親御さんで一緒にライブ鑑賞ができるファミリーエリアが復活します。子連れにも優しいフェスなんです!

今年はこれまでのI ROCKSが積み上げてきたフェスの形を飛躍的に取り戻すことを目指して開催されます。今回の特集を読んで、久しぶりにフェスやライブに行ってみるかと思った方、モヤッとした日々を過ごしている方、何か刺激が足りない方、ぜひ音楽を浴びにお越しください。大好きなバンドマンの言葉を借りるなら、「音楽自体は無力かもしれないけれど、人の心を動かすことができるもの」です。生活や環境が変わっても、音楽の力に救われる瞬間がきっとあると思います!

開催まで2週間を切り、チケットは一部SOLD OUTも出てきていますが、まだ間に合うものもあります。プレイガイド、取り扱い店舗ともに購入が可能なので、お好きな方でGETしてみてください!

▼プレイガイド(オンライン購入)
https://eplus.jp/irocks2023/

▼SHOP ROCKS(店舗購入)
https://irocks.jp/IROCKS2023/ticket/shop-rocks/

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PROFILE
LACCO TOWER(ラッコタワー)
2002年、伊勢崎市出身のメンバーを中心に結成。2015年『日本コロムビア(トライアドレーベル)』よりメジャーデビュー。「ドラゴンボール超」「ザスパクサツ群馬」「伊勢崎オートレース」など、数々のタイアップソングを手がけるほか、地元である群馬県にて2014年からロックフェス『I ROCKS』を主催している。
[WEB]https://laccotower.com/
[Twitter]@LACCO_TOWER

PROFILE
秀吉(ヒデヨシ)
柿澤秀吉(Vo, G)、町田龍哉(B)、神保哲也(Dr)からなる群馬県出身の3ピース・ロックバンド。2008年に『へそのお』でデビュー。ギターロックと呼ばれる範疇に収まらない卓越した楽曲から著名人の支持も多い。2022年、高崎芸術劇場でのワンマンライブを成功させ、新生秀吉として結成20周年を控えている。
[WEB]https://hideyosea.com/
[Twitter]@hideyoshi_staff
[Instagram]@hideyoshi_staff

PROFILE
KAKASHI(カカシ)
群馬を拠点に全国で活動する4ピース・ロックバンド。誰もが抱く言葉にできない思いや葛藤。それらを代弁するかのような真っ直ぐで心に突き刺さる日本詩とキャッチーなメロディ。人対人の熱のこもったライブパフォーマンスが話題を呼ぶ。全国から盟友を迎える「灯火祭」、群馬のアーティストのみで開催する「俺たちの群馬だっ!!!」等、精力的に活動中。
[WEB]https://www.kakashi-official.net/
[Twitter]@kakashi___g4
[Instagram]@kakashi_band

PROFILE
oldfame(オールドフレーム)
群馬県発の3ピース・ロックバンド。メンバーは狩野太祐(Vo&Gt)、ヤマグチユウキ(Ba&Cho)、藤原徹郎(Dr)からなる。「想いを言葉に、感情を歌に。」をコンセプトに、リスナーと共に歩んでいく音楽が聴く者の心に響く。『aisuru.FES』を主催するほか、全国ツアーを回るなど精力的なライブ活動を続けている。
[WEB]https://oldflame.aremond.net/
[Twitter]@oldflame_3
[Instagram]@oldflame_gunma

PROFILE
DJガッツいわせwithスベリー・マーキュリー
吉本興業所属群馬県住みます芸人「ガッツいわせ」とQUEENのフレディ・マーキュリーリスペクト芸人「スベリー杉田」によるユニット。それぞれ芸人として活動しながら、DJとしても活動中。様々なイベントやロックフェスに出演し、お笑いとロックでフロアを盛り上げる。
[Twitter]@hanamegapixel
[Instagram]@guts.iwase

▼クレジット
出演/塩﨑啓示(LACCO TOWER)、柿澤秀吉(秀吉)、堀越颯太(KAKASHI)、狩野太祐(oldflame)、ガッツいわせ(DJガッツいわせwithスベリー・マーキュリー)
協力/メガネのイタガキ文化ホール伊勢崎
撮影/三木康史(troisdesign)
インタビュー・文/佐々木覆(troisdesign)

※掲載情報は取材時と変更になっている場合もあります。最新の情報は公式HP・SNS等にてご確認ください。

【4/7〜4/9】I ROCKS 2023

[所在地]
伊勢崎市昭和町3918(メガネのイタガキ文化ホール伊勢崎)
[TEL]
0270-23-6070
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