【富岡市・軽井沢町|終了】デビュー20周年を迎えた安藤裕子がアコースティックツアーを開催。

先日、YouTubeで「リリイ・シュシュのすべて」が期間限定配信されていて、久しぶりに鑑賞。痛くて残酷な青春の描写は、やはり20年以上経っても苦しい気持ちになりますね。それでもこの作品って、後世に語り継がれる映画であり、強烈に焼きつけられた方が多いのも事実だったりします。ただ、しばらくは観なくていいかな(笑)こんにちは、motto編集長の三木(@troisdesign)です。

さて、皆さんには「どんなに年月が経っても色褪せない曲」ってありませんか。

僕にとってのその一つが、安藤裕子さんの『海原の月』という楽曲です。今回は音楽や映画であったり、個人的に敬愛するアーティスト・安藤裕子さんに纏わる、主観多めの記事となります。そのあたりご理解いただければと・・・。

1. 映画に愛された安藤裕子の音楽。

僕は堤幸彦監督の映画に魅了された一人で、「溺れる魚」「恋愛寫眞」「2LDK」「明日の記憶」「包帯クラブ」など、ほとんどの作品を公開すぐに観に行った記憶があります。その中で、「2LDK」の主題歌となっていたのが、安藤裕子さんの『隣人に光が差すときという楽曲。彼女の音楽に初めて触れたのは、まさしくこの映画でした。20年近く前に購入した1stフルアルバム「Middle Tempo Magic」にこの楽曲は収録されていて、今でも納戸に眠ることなくつい聴いてしまう一枚となっています。その後『のうぜんかつら』の大ヒットを経て、再び堤幸彦監督とタッグを組んだ楽曲が、映画「自虐の詩」の主題歌となった『海原の月』。この曲は監督が直接オファーをして、彼女自身も実際に作品を観てのインスピレーションから作られたようで、まさに映画のために書き下ろした究極のバラードでした。

邦画の歴史にこの人あり。自分の青春時代はもちろんのこと、その独特の映像表現や脚本で常に邦画界の第一線を走り続けてきた巨匠・岩井俊二さん。「Love Letter」「スワロウテイル」「リリイ・シュシュのすべて」「花とアリス」「リップヴァンウィンクルの花嫁」「ラストレター」など、名作ばかりを生んできたことはもはや僕が説明するまでもないかと。その岩井俊二監督の最新作「キリエのうた」が、今とても注目されています。人気絶頂のなか解散となったBiSHのアイナ・ジ・エンドさんが主演を飾り、助演に松村北斗さん・黒木華さん・広瀬すずさんなどの豪華キャストが集結。さらに村上虹郎さん・粗品さん(霜降り明星)・大塚愛さん・七尾旅人さん・江口洋介さん・吉瀬美智子さん・石井竜也さんなど脇を固める俳優陣も個性豊かで実力者ばかり。3年ぶりの新作ということも重なって、話題が尽きません。そして、この作品に役者としても出演し、劇中曲『帰れない二人』をカバーしているのが安藤裕子さんなのです。井上陽水さんのあの名曲が彼女の絶対的な表現力で、新曲が出たのかと思わせるほど良い意味で転生しています。その圧倒的な歌唱の様子がYouTubeチャンネル「岩井俊二映画祭 Iwai Shunji film festival」で映像化されているので、ぜひご覧いただきたい。同チャンネル内には、彼女の代表曲『のうぜんかつら』を岩井俊二さんがキーボードで参加するという貴重なコラボ映像も配信していたりと、映画好きにはたまらないコンテンツばかりです。

映画に愛され、映画監督に愛された安藤裕子さん。彼女の音楽には、聴こえる音言葉以外に人々の心を魅了し、焼きつけてしまう特別な力があるのだと思います。この先、彼女から生まれてくるであろう楽曲に、また素晴らしい映画が同時に生まれてくる未来が、僕には想像できます。

2. 富岡・軽井沢を含む、アコースティックツアー「続:アナタ色ノ街」を開催。

2022年末から2023年1月に開催していたアコースティックツアー「アナタ色ノ街」の後半戦が、10月22日の仙台を皮切りにいよいよスタートします。東日本編ということで、群馬県民として、富岡・軽井沢が本ツアーの日程に組み込まれているのは嬉しい限り。「富岡製糸場」「軽井沢ユニオンチャーチ」という歴史と哀愁の漂う会場を舞台に、アコースティックな特別な編成で挑むライブは、間違いなく唯一無二の貴重な時間になることでしょう。

photo by Kana Tarumi

そして、なんと、ご本人からmotto読者の方へメッセージが届いています!

photo by Kana Tarumi

群馬は何度か訪れていますが、富岡製糸場という郷愁的な場所でライブができるということで非常に楽しみにしております。軽井沢は幼い頃、夏を多く過ごした場所です。久しく訪れていないので記憶の風景が残っているか確かめたいなあ。歌手活動が20周年を迎え、お休みする時期もあったし、のりのりな時期もあったし、思い起こせば色んな人と出会って歌ってきました。去年末から4年ぶりのアコースティックライブを再開して、普段会いに行けない街の人々にご挨拶するつもりで旅をしています。音楽でちょっと息抜きしたいななんて思う人がいらしたら、ぜひ、遊びに来てください。お会いできるのを楽しみにしています。


▼ライブ情報
安藤裕子アコースティックツアー「続:アナタ色ノ街」
10月22日(日) @仙台・青葉山公園 仙臺緑彩館(宮城県)
10月26日(木) @金沢・21世紀美術館 シアター21(石川県)
10月28日(土) @砺波・出町子供歌舞伎曳山会館(富山県)
10月29日(日) @新潟・北方文化博物館(新潟県)
11月11日(土) @軽井沢・軽井沢ユニオンチャーチ(長野県)
11月12日(日) @富岡・富岡製糸場(群馬県)
12月1日(金) @東京・草月ホール(東京都)
12月6日(水) @大阪・旧桜宮公会堂(大阪府)
チケットお申し込みはこちらから

3. 自身で立ち上げた新レーベル”AND DO RECORD”より、2年ぶりの新譜「脳内魔法」をリリース。

「AND DO RECORD(読み:アンドドゥレコード)」は、そのまま「安藤の記録」という意味で”今の自分自身を発信していく”という想いを込めて、安藤裕子さん自らで命名しています。映画「キリエのうた」で共演を果たした旧友・大塚愛さんの大ヒットソング「さくらんぼ」を、オルタナティブな解釈でオマージュさせた楽曲『さくらんぼみたいな恋がしたい』を含む、全13曲のフルアルバムです。

安藤裕子さんはこのアルバムについて、このように語っています。


私に色んな景色を見せてくれる1枚に仕上がりました。内容はほぼ2枚組。音のチャレンジは勿論、近代文学を想起して作った曲も。コーラスワークなんか近年の中で一番凝ってると思う。詩世界に関して言うならば、ずっと瞼の裏に残っていた子供の頃の想い出もあるし、青春の煌めきも、現実の社会に感じる違和感やムカつくあやつへの悪態、量子のお話もね。沢山詰め込んで13曲になっちゃいました。結局作るのが大好きなんですよね。エンディングが5回くらい訪れるボリュームですので、心して聴いてください。でも一番に溢れてるのはあなたへの愛で、ハローとグッバイです。


『脳内魔法』
CD(紙ジャケット仕様) / 2023年10月11日発売 / ¥3,500(税込)
UCAD-0001 / AND DO RECORD
[配信URL]https://ssm.lnk.to/Nonai-Maho

  1. 1. 金魚鉢
  2. 2. 星へ還る
  3. 3. ミサイルの降る夜は
  4. 4. スキスギてズキズキ
  5. 5. Tikpop
  6. 6. 猛火の羽
  7. 7. さくらんぼみたいな恋がしたい
  8. 8. Family Ties
  9. 9. あなた色の街
  10. 10. 沈澱する世界
  11. 11. Guardian of Paradise
  12. 12. 泡の起源
  13. 13. ただララバイ

いろんな感情が入り混じり一見バラバラな楽曲で何度も完結を迎えそうなんだけど、13曲聴き終わった時に一つの納得感みたいな感情が宿ります。M1『金魚鉢』は初期の彼女を感じられ、ギターの旋律と共に青春時代が戻ってくるような懐かしさを覚えます。出だしからリード曲かのような完成された展開で、一気に心を持っていかれます。M2『星へ還る』は、彼女の魅力の一つ「アナログ的な音の旋律」が含まれていて、苦しさと優しさが交錯した楽曲です。冒頭で触れた映画「リリイ・シュシュのすべて」で、今にも使われそうな岩井俊二映画を彷彿させる世界観があります。まるで台詞を語っているかのようなミュージカル調なM3『ミサイルの降る夜は』では、彼女のオルタナティブさが全面に出た楽曲だと言えます。M4『スキスギてズキズキ』ではガラッと色が変わり、”ポップ×キュート”な爽快ナンバーで、言葉遊びからもその可愛らしさが垣間見えます。メロウで不思議な世界が広がるM5『Tikpop』・M6『猛火の羽』を挟み、前述で綴ったM7『さくらんぼみたいな恋がしたい』でアルバムは後半に突入。家族の絆を唄ったM8『Family Ties』は、アコースティックギターとピアノの音色が、互いの存在を確かめ合うかのように愛情深く交わっていきます。M9『あなた色の街』は、失恋の想いの経過を描写した珠玉のバラード。Cメロ時に変化する曲調は、心の声を叫んでいるよう。絶望と焦燥の世の中を描いたM10『沈澱する世界』は、訴えかける力強さにハッとさせられます。個人的に大好きな一曲です。M11『Guardian of Paradise』は、突吟(ちちぢん)を効かせ沖縄民謡の要素が取り入れられた情歌。カノン風に歌い上げるM12『泡の起源』は、幻想的な音色に終始包まれています。本作を締め括るM13『ただララバイ』は、ラストに相応しいアップテンポでクセになるナンバー。ライブで大合唱が起こる風景が想像できます。

2年ぶりの新譜となる「脳内魔法」には、新たな出会いがあり過去との別れのようなものも存在していました。ハローとグッバイ、まさに本作を語るのに相応しい表現です。この一枚に出会えて、少なくとも僕は幸せです。きっと、それが聴き終えた時の納得感だったのかもしれません。アコースティックツアー「続:アナタ色ノ街」で、安藤裕子さんの魔法に触れてみてください。

追伸:僕は明日「キリエのうた」を観に行きます。

PROFILE
1977年生まれ。シンガーソングライター。2003年ミニアルバム「サリー」でデビュー。2005年、月桂冠のTVCMに「のうぜんかつら(リプライズ)」が起用され、大きな話題となる。類い稀なソングライティング能力を持ち、独特の感性で選ばれた言葉たちを、囁くように、叫ぶように、熱量の高い歌にのせる姿は聴き手の心を強く揺さぶり、オーディエンスに感情の渦を巻き起こす。物語に対する的確な心情描写が高く評価され、多くの映画、ドラマの主題歌も手がけている。CDジャケット、グッズのデザインや、メイク、スタイリングまでを全て自身でこなし、時にはミュージックビデオの監督まで手がける多彩さも注目を集め、2014年には、大泉洋主演映画「ぶどうのなみだ」でヒロイン役に抜擢され、デビュー後初めての本格的演技にもチャレンジした。2020年TVアニメ『進撃の巨人』The Final Seasonのエンディングテーマ曲として「衝撃」が決定し、今もなお国内外にて大きな反響となっている。2023年6月28日に新レーベル「AND DO RECORD」を設立し、第1弾シングル「さくらんぼみたいな恋がしたい」を配信リリース。10月11日にはAL「脳内魔法」をリリース。
[Web]https://www.ando-yuko.com/
[X]@YukoAndo_UCAD
[Instagram]@yuko_ando/
[YouTube]https://www.youtube.com/@Yuko_Ando

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▼クレジット
写真提供/ホリプロ
文/三木康史(troisdesign)

※掲載情報は取材時と変更になっている場合もあります。最新の情報は公式HP・SNS等にてご確認ください。

安藤裕子アコースティックツアー「続:アナタ色ノ街」

[所在地]
富岡市富岡1-1(富岡製糸場 西置繭所多目的ホール)
[営業時間]
開場14:00 / 開演14:30
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