【藤岡市|終了】今年は節目の10年目。「第10回 かんな秋のアート祭り」がまもなく始まる。

学生時代はモネやルノワールなど印象派に憧れて、ああやって光を操れたらなーと感じながら、よく作風を真似していました。印象派は、自然の光を作品でいかに表現するかを試みていて、自然界には存在しない「黒」は使わなかったんです。余談ではありますが、赤・緑・青(RGB)の「光の三原色」は、混ぜ合わさると白(W)になりますよね。モネが“光の画家”って言われる所以って、こういうことなんだなーと勝手に思ってしまうのです。

お久しぶりです、前説長めのmotto編集長・三木(@troisdesign)です。

さて、甲子園や夏フェスも終わり、一年で最も過ごしやすいと言われる季節“秋”にまもなく突入です。読書・スポーツ・食欲と秋は何かと盛んな季節ではありますが、今回は芸術にスポットを当てて、注目のアートイベントをご紹介します!

1. 芸術家たちに愛された街「鬼石と神泉」。

神流川流域の両岸、群馬県藤岡市鬼石周辺地域と埼玉県児玉郡神川町地域(旧神泉周辺地域)を総称して、この地の芸術家たちは 「かんな」と呼んできました。このエリアは三波石峡や冬桜が有名で、自然豊かな環境は創作に没頭できるためか、芸術家たちの拠点になることが多かったようです。かつてこの地に、画家「故・堀越千秋」さんがアトリエを構えていました。彼を慕って、芸術を志す若者たちが次々と移り住み、彼らは山に穴窯を築き多くの陶芸作品を生み出していきました。その中で、アート・レジデンシー「シロオニスタジオ」を立ち上げ、海外の芸術家たちが集まり移住してきた歴史があります。

2. 今年は節目の10年目。「第10回 かんな秋のアート祭り」がまもなく始まる。

大自然に囲まれた「かんな」で生き続け、なおも成長を遂げていっている芸術を堪能できる芸術祭「かんな秋のアート祭り」。今年は節目の第10回を迎えます。この地にアートを運んできた堀越千秋さんを筆頭に、世界各地の芸術家の作品たちが一斉に並びます。会場は「百年の杜カネザワパーク」「鬼石多目的ホール」を中心に、地域の連携各所で行われます。

チラシ・表面
チラシ・裏面

3. 鬼石・神泉に由縁のある芸術家の作品たちが並ぶ。

[堀越千秋]
1948年、東京生まれ。1976年よりスペイン(マドリード)に住み始め、1995年、神泉にアトリエを構える。以来スペインと日本を行き来する。フラメンコと、その歌・カンテを歌うヒターノたちと交わり、その芸術に酔い痴れ自らで歌った。自分の見たいものを体で描き、現れたものに驚き喜んでいた。鬼石・神泉で若者たちと戯れるように舞台美術を制作した。闊達に文章を著した。山に築いた穴窯で穴の開いた茶碗を焼き、自ら「国宝」と呼んだ。2014年、スペイン政府よりエンコミエンダ文民功労章を受章。これを祝し、「第1回かんな秋のアート祭り」が開催される。2016年、「第3回かんな秋のアート祭り」での展示を最後にスペインに帰国、還らぬ人となる。
http://www.chiakihorikoshi.com/

[植村映子]
鬼石生まれ鬼石育ち。現在は生まれ育った鬼石町にアトリエを構え作品の制作、デザイン、着物の柄足しを行っている。独自の模様描きをはじめ、抽象画、奇妙でかわいいをコンセプトにしたイラストなども作成している。

植村映子「いびつでひとつ」

[髙村木綿子]
東京都出身。武蔵野美術大学日本画学科卒。定期的に個展・グループ展を開催。壁画やイラストの仕事多数。架空社の絵本「赤いろうそくと人魚」(小川未明作)作画担当。堀越千秋の舞台美術制作等に長年携わる。

髙村木綿子「向こう側の赤い実」

[田島志乃]
東京造形大学卒業。同大学研究生修了。2012年、自身の制作拠点として、atelier Shino(アトリエ シノ)を鬼石にオープン。絵画展、コンサート、JAZZフェスティバルなど主催する。2014年、一筆で決める墨を使っての絵画に開眼。2017年、実力派JAZZ ピアニスト田窪寛之氏の初アルバム「Tone Painting」のCDジャケットに作品を提供する。同年より、株式会社TJMデザイン、キッチンハウス(世田谷、新宿、立川、本牧テラス、岡山、筑波)ショールームにて作品を展示中。2018年、東京モーターサイクルショー(東京ビックサイト)にてバイク画を展示。2022年、高山社情報館、養蚕信仰に関する特別展「猫が神様になっちゃった展」狛猫画を展示。

田島志乃「#7 Betty ベティ」

[アニタ・ガラッツァ]
オーストリアのプレアルプスで育ち、子供の頃から写真家として活動してきた。リンツ芸術大学で学位を取得し、高度に装飾された写真芸術家としてプロのキャリアをスタート。在学中、オーストリア文化省からクラクフ(ポーランド)とパリに旅行するための最初の奨学金を受け取る。これに続いて、オーストリア国立写真奨学金を含む数多くの助成金や賞が授与された。
http://www.anita-gratzer.net/

アニタ・ガラッツァ「うかれ燕」

[若山卓]
自然の中の形「命の形」に興味がある。植物の葉の形、樹々が空に描く形、朽ち果て本質へ帰ろうとする形、霧の中に現れてまた消えてゆく山の形。命はまた、消えたり生まれたり繰り返される想い、物語として現れる場合もあると感じている。それらを描く瞬間にあるのは、ただ対象への深い愛着のようなもの。

若山卓「群像のための習作」

[渡辺渡]
1979年栃木県生まれ。幼いころより絵を描く。大学では上代文学を専攻。緻密で写実的な絵を描き、東京在住時は多くの個展を開催。足利の山の麓での仮寓を経て鬼石へ。十一屋(現・百年の杜カネザワパーク)のトチの木に思いを寄せて催した「トチに」は代表的プロジェクト。

渡辺渡

[テレサ・クレア]
1985年コロンビア、ボゴタ生まれ。2008年にコロンビア国立大学美術学部を卒業。以来、既に14年にわたりアーティスト活動に専念しており、数多くのグループ展への参加や個展の開催をしている。2018年にはスポーツブランド・ナイキとのコラボレーション、2019年に著書「徒歩でイスタンブール(Estambul a pie)」を出版、2023年のロサンゼルス・アートフェアへは紙部門にコロンビア代表のゲストアーティストとして参加。2018年よりコロンビアのベアトリス・エスゲラ・ギャラリーの専属契約アーティストとして活動。作品の一部はアメリカ・イギリス・フランス・シンガポール、日本でプライベートコレクションとなっている。現在、日本在住。

4. 子供たちに豊かな自然・あそび・文化を伝える「あそびの学校」。

鬼石には、三波川体験交流館「あそびの学校」が存在します。廃校となった「旧・三波川中学校」の跡地に、民営の児童館として2001年に開館しました。この学校は、「子供たちに豊かな自然、あそび、文化を伝えよう」をメインスローガンとし、21世紀を担う青少年を育成し、子供をとりまく環境などの健全な発展を目指すことを目的としています。過去のかんな秋のアート祭りでは、どんな人も自由に表現できる“生の芸術”を、遊びとともに紹介してきました。今年は音・言葉・もの・人・歴史、いろんな想いをつむぐ空間として、「つむぐアート展」を同時開催するとのことです。子連れでも足を運べるというのは、筆者としても嬉しい限りです。

5. プレイベント「エリザベス・ウィリアムズ ソプラノリサイタル」を開催。

2018年の夏、シロオニスタジオのインターンシップ生として鬼石にやって来たエリザベス・ウィリアムズさん。大学を卒業後、プロのソプラノ歌手となった彼女が、「温かく迎え入れてくださった皆さまに恩返しがしたい」と、リサイタルを開きます。オペラの曲に馴染みがなくても楽しめるように、楽曲の説明なども交えてお送りするそうです。これまで一度もオペラを観たことのないという方にも、気軽にご来場いただきたいですね。アメリカ・イタリア・ポーランド・南アフリカなど世界各地でコンサートを行い、精力的に活動し続ける彼女の素晴らしい歌声を、是非生でお聴きいただきたいです。

チラシ

▼概要
期間/9月10日(日)
時間/16:30開場、17:00開演
会場/百年の杜カネザワパーク
料金/入場料1,000円(高校生以下無料)
チケット/shiroonistaff@gmail.com
※高校生以下の無料席もチケットが必要です。

6. アートディレクターを務める渡辺嘉達さんのイベントに寄せる想い。

「神流川をはさんだ鬼石・神泉地域は芸術家を引き寄せる何かがある場所です。それが何なのかを探るには、この地に引き寄せられた芸術家の作品、この地に育まれて生まれた作品を、この地で観てもらうのがよいと考えました。展覧会を観ることを通して、気づかれていないこの地の良さ、芸術家の視点、作品と場所との響きあいを、自分の目で観て、ゆっくりと静かに感じてほしいと思います」

鬼石で、ギャラリーカフェ「芸術・茶屋 カタチ」を夫婦で営む渡辺さん。自然豊かで芸術家たちに愛されたこのかんなに惹かれ、都内から鬼石に移住されました。群馬への移住を考える人のためのライフスタイルWEBマガジン「ぐんまな日々。」でもご紹介されているので、合わせてご覧いただければと思います。

また、motto連載「Da-iCE和田颯のハヤペディア」では、カフェの撮影・取材もさせていただきました。素敵なご夫婦で、ここにいる時間は心穏やかになり、時間がとてもゆっくり流れていきました。鬼石の穴場スポットなので、ぜひ当イベントと一緒にカフェタイムもお楽しみいただければと思います。

第10回 かんな秋のアート祭り
KANNA Autumn Art Festival 2023

▼概要
期間/2023年9月16日(土)~24日(日)
時間/10:00~17:00
会場/百年の杜カネザワパーク鬼石多目的ホールあそびの学校、地域連携各所、ほか
料金/入場無料
主催/かんな秋のアート祭り実行委員会
後援/藤岡市藤岡市観光協会藤岡市鬼石商工会
共催/鬼石地域活性化協議会アートな街づくり部会
HP/http://www.kanna-art-festival.com
Instagram/https://www.instagram.com/kanna_art_festival
※一部会場は会期と開場時間が異なります。詳しくはHP・SNSをご確認ください。
※一部のワークショップなどは有料となります。

▼出品者(予定)
堀越千秋 / 植村映子 / 川島一恵 / 髙村木綿子 / 田島志乃 / 田島清兵衛 / キール・ハーン / アニタ・ガラッツァ / マーク・ラッセル / 若山卓/渡辺渡 / テレサクレア / シロオニスタジオ参加アーティスト / あそびの学校参加アーティスト / 阿部浩之と遠藤夏香+marksearch(Sue Mark+Bruce Douglas) / かんなの小学生たち / ほか

▼関連イベント
地域連携各所にて、作品展示、ワークショップ、パフォーマンスなどを開催します。内容決定次第、HP・SNSで最新情報をお伝えします。

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▼クレジット
写真提供/かんな秋のアート祭り実行委員会、写真AC
撮影・文/三木康史(troisdesign)

※掲載情報は取材時と変更になっている場合もあります。最新の情報は公式HP・SNS等にてご確認ください。

第10回 かんな秋のアート祭り

[所在地]
藤岡市鬼石(百年の杜カネザワパーク、鬼石多目的ホール、あそびの学校、地域連携各所、ほか)
[営業時間]
10:00〜17:00
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