こんにちは!motto編集部のオオウ(@ounco_coverdeath)です!みなさん、落語を聞きに行ったことはありますか?実は群馬県は意外と落語の盛んな土地で、様々な場所で落語会が開催されているんです。もしかしたら、草津温泉の『熱乃湯』で、温泉らくごを聞いたことがあるなんて方もいるかもしれませんね。今日は高崎市在住の落語家『立川志の彦さん』を招いて、落語家を目指すきっかけや落語の魅力について語ってもらいました。落語ってなんだか難しいと敬遠していた人はぜひご一読を!
1. サッカー少年の人生を変えた落語との出会い
──志の彦さんは、東京都出身とのこと。
そうですね、東京都生まれ・育ちで、幼少の頃から大学までサッカー一筋でした。根っからの体育会系で、日本大学文理学部体育学科というオリンピックを狙うエリートが周りにゴロゴロいる環境でした。
──なぜ体育会系とは無縁そうな落語の世界へ?
運動が大好きな僕は大学卒業後、ライフガード(水辺のレクリエーションにおける救命のプロ)という職に就くんです。身体を動かすことと同じくらい人を笑わすことも大好きだったので、休みの日にはお笑いや映画、演劇、小説などに没頭していました。23歳のときに師匠(立川志の輔)の演目を観た際、「話一つで笑いを取れるエンターテインメント」に、これまで味わったことのないような感銘を受けました。
──人生を変えてしまうような運命的な出会いですね。
小さい頃から周囲の笑いを取るのが好きな一面もあったのですが、足を運ぶようになってからは「弟子入りしたい」と思うようになりました。師匠は忙しい方なので手紙も送りましたが、もちろん返事は来ませんでした。ある日、名古屋で公演があると聞きつけ、師匠の出待ちをしようと思ったのですが、手持ち金がなく。いてもたってもいられず、東京からヒッチハイクで乗り継いで名古屋にいる師匠の元へ駆けつけました(笑)。当時、弟子入り志願者が大勢いる中、ヒッチハイクのインパクトもあってか、顔を覚えてもらい面接までたどり着けました。弟子入り見習いの期間はほぼ無給で全うしなければなりませんので、親を含めてその辺りの覚悟があるかの意志確認を経て、落語家としてのキャリア「立川志の輔の5番弟子=立川志の彦」がスタートしました。
2. 音楽と落語
──そこから色々経験を積まれたと思いますが、現在「二ツ目」ですよね。
落語は「江戸落語」と「上方落語」で大きく二分できます。僕が属しているのは江戸落語ですので、前座→二ツ目→真打の順に昇進していきます。立川流では、二ツ目に昇進するためには500とある古典落語の演目のうち50席、真打へは100席を目安に身につけなくてはなりません。今年で芸歴15年目、現在演目数は90席ほどまでになりました。
──90は驚きです!実は音楽ライブと似ている部分があるなと思っていて、演目を組むところはセットリストを組むような感覚に近いのでしょうか?
演目によって尺が異なるので、自分一人しか出演しない独演会では限られた時間の中(2時間など)でどの演目をどの順にやるか全体の流れを考えます。マクラ(演目の前に話す雑談のようなもの)でお客様の反応を見て、その場で予定していた演目を変えたりもします。数名で行う公演の場合は、前の人がやった演目に似ているものは避けたり、舞台袖からお客さんの反応を見てからどんな内容がウケそうかなど、用意したものの中からその場で合わせていくこともします。目の前にいるお客様に最大限笑ってもらうためにこの辺りは大切にしていますね。
──後者は即興性を考えるとDJの方が感覚が近いのかもしれないですね。ラップグループ『MOROHA』のライブに対バンとして落語家が呼ばれたり、落語家『立川志らく』の公演にバンドが出演するなど垣根を超えた公演が見受けられます。LACCO TOWER主催のロックフェス『I ROCKS』には、『三遊亭ぐんま(元バンドマン)』が出演したこともありました。ロックバンド『SUPER BEAVER』のフロントマン渋谷龍太も落語好きとして知られていますし、どこか親和性があるのでしょうか。
落語には先述のマクラがあって場を作ってから演目に入っていくところや、落語家の間の取り方などがライブのMCや企業にお勤めの方がプレゼンするときの参考にしていただいているという話は聞きますね。僕もミュージシャンの方に呼んでいただいて音楽やアウトドア系のイベントに出てみたり、ミニシアターや飲食店でやったりもしました。落語がほかのカルチャーと触れる機会があることは、若い方や新しいお客さんに知ってもらうチャンスでもあるので良いことですよね。
3. 落語は老若男女が楽しめる大衆芸能
──落語って伝統芸能的な側面がどこかハードルを高くしているように感じます。
落語は本来、大衆芸能なんです。僕も初めての人でも足を運んでもらうきっかけになればと思い、SNSを使ったり、販促物やグッズをポップなデザインのものにしてみたり工夫しています。東京駅の構内や飲食店など、本来は落語を聞く場所ではない場所に飛び込んで落語をやったりもしてきました。
ただ、音楽のライブやコンサートは照明や演出などがあると思いますが、落語は言葉だけでその世界に引き込むため、環境にとても左右されると痛感しました。実際、僕が企画する公演は100%落語を楽しんでもらえるよう、そういった環境づくりに配慮しています。現在、真打昇進に向けて、全国各地を巡る落語会を実施していて、5月には高崎でも公演があります。先にもお話ししましたが、落語は元々大衆的なもので「人々が笑うために足を運ぶ」場所です。難しいことを考えたり気構えることなく、楽しんでもらえれば幸いです。
POINT
──ズバリ、落語の醍醐味は?
まず、子供からお年寄りまで一緒になって楽しめる娯楽ってそんなにないと思うんです。笑いは感情の共有なんです。子供から大人までだれもが共有できる笑いが落語にはあって、みんなが同じところで笑ったりして会場ではとても一体感があるんですよ。
僕が師匠の演目を聞いて感銘を受けたように、演出に頼らず言葉だけで伝えていくところも魅力です。落語家は、聞き手の頭の中のスクリーンを使って、想像力を掻き立て、心地良い刺激やしびれを与えていくんです。お客さんは話を聞いているだけなのに、情景が思い浮かぶ、ちょっぴり不思議なところが面白いですよね。
4. 初めての落語に足を運んでみよう!
「寄席(よせ)」は音楽業界でいうところのライブハウスやホール。都内には4箇所の寄席があって、ほぼ毎日公演が行われているので仕事帰りにふらっと立ち寄れます。群馬などの地方では寄席がないので、ホールや劇場などで開催する落語会に参加する形になります。大きな公演は各種プレイガイドを使ってチケットの購入になりますが、小規模のものは主催へのメール予約制のものがほとんど。マナーとしては「携帯電話を鳴らさない」「撮影禁止」で、飲食の可否は会場によって異なりますので事前にチェックしておきましょう。ときにはいつもと異なるエンタメに触れて新たな世界を覗いてみては?
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PROFILE
立川志の彦(タテカワシノヒコ)
1983年5月28日生まれ。落語立川流。立川志の輔一門、五番弟子。2007年に立川志の輔に入門し、2014年二つ目に昇進。2020年より妻の実家のある高崎市に移住。仕事で東京と高崎を行き来しながら群馬の自然の中で子育て満喫中!
▼クレジット
撮影/三木康史(troisdesign)
写真提供/立川志の彦
インタビュー・文/佐々木覆(troisdesign)
※掲載情報は取材時と変更になっている場合もあります。最新の情報は公式HP・SNS等にてご確認ください。
【5/8(日)・5/29(日)】立川志の彦落語会in高崎
- [所在地]
- 【5/8(日)】高崎市総合福祉センター1F会議室1 【5/29(日)】高崎市文化会館小ホール
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