こんにちは。motto編集部ライターのERIです。突然ですが、みなさん映画はお好きですか?実は私は、親が映画ファンだったこともあり、物心がついた頃から映画館にはよく連れて行ってもらっていました。私自身も幼い頃から映画が好きで、学生時代には実家の近くにある映画館の映写室で、映写技師のアルバイトをしていたこともあります。その頃はフィルム映写機での上映が殆どでしたので、配給会社から複数巻に分けて送られてくるフィルムを一本の作品につなぎ合わせて夜な夜な試写をしたり、映写機にフィルムをセットしたり、自分よりもさらにマニアックなスタッフ仲間と映画談義に花を咲かせたり等と、貴重な時間を過ごさせてもらっていました。今回は映画好き必見、前橋市にある『前橋シネマハウス』をご紹介します。
1. 映画王国ぐんま!?
実は、群馬県は映画撮影スポットがとてもたくさんあるんです。災害が少なく、日照時間や快晴日数が多く、観光地化されていない山々などの美しい自然が豊富で、撮影資源に恵まれている上に東京都内からのアクセスも良いので、「撮影するなら群馬県」と言われているそうです。ぐんまフィルムコミッションによれば、高崎市内や前橋市内はもちろん、県内には482ものロケ地があるそうです。映画ファンの中には、作品のロケ地を巡る方もいらっしゃいますね。
現在、群馬県内には映画館が8箇所あります。その中でも『前橋シネマハウス』はいわゆるミニシアターと言われる部類になります。ミニシアターは、大手配給会社の傘下にない独立的なシアターなので、大手のシネコン(シネマコンプレックス)では上映されないような、アート性やドキュメンタリー性があったり、個性の強い作品などが上映されることもあり、映画ファンには根強い人気がありますね。
2. 時代と共に変遷していく映画館
その昔、群馬県にもシネコンがドーンと出来る以前は、街中にたくさんの映画館がありました。前橋市の中心街には「オリオン座」というロードショー館があり、市街地の銀座通りには「前橋国際東映」、そして洋画中心の「前橋シネマ」や「前橋スバル座」、「前橋東宝電気館」そして市街地の外れには「前橋会館」など・・映画館が点在していたそうです。それぞれの映画館毎に特徴もあったようで、そんな時代が懐かしい方も多いかもしれません。
バブル全盛期の1987年には、前橋西武の別館(現アーツ前橋)に『前橋シネマハウス』の前身とも言える「前橋テアトル西友」が開館しました。いわゆるミニシアター系の映画館で、当時地方としては珍しくレイトショーなどの上映もあり、特に本格志向の映画ファンに人気だったようです。
しかし、時代の流れでレンタルビデオ屋が出てくると、家庭で気軽にレンタルビデオで映画を観る人が増え、それに伴い映画館の興行がだんだん下火になってゆき、前橋市内の映画館も次々と閉館してしまいました。2006年に「前橋テアトル西友」は閉館となり、翌年に「ユナイテッド・シネマ前橋」がオープンするまで前橋市内に一時的に映画館がなくなってしまい、前橋市民は映画を観るために伊勢崎のシネコンや高崎にまで足を運んだという時期もあったそうです。
その3年後の2009年に、「前橋テアトル」は「シネマ前橋」として再び開館します。この頃は、常設の映画館というよりも特集上映にシフトしていたようです。しかし2011年には再度閉館になり、しばらくは前橋市の管理のもと、講演会や自主上映が行える貸し館として運営されていたそうですが、2018年3月に『前橋シネマハウス』として生まれ変わったというわけです。
3. ここに来れば素敵な作品に出会えます
時代と共に映画やエンターテイメントの形態がどんどん変わっていき、紆余曲折を経て今の形になった『前橋シネマハウス』。現在は、家族のようなつながりを地域の人たちと創っていきたいという想いで「映画はもう一人の家族」をテーマに掲げ、ミニシアターの枠にとらわれず、子どもからお年寄りまで様々な層の方に向けて幅広い映画を上映しています。上映が少ない、ミニシアター系の良作から、シネコンで上映が終了したビッグタイトル、子どもと一緒に家族で楽しめる作品から過去の名画まで、様々なジャンルからスタッフが厳選して上映しており、隠れた名作に出会える楽しみもあります。
『前橋シネマハウス』には、2つのスクリーンがあります。116席を備えたメインシアターでもある「シアター0」と、子ども向けの上映「こどもシネマハウス」を行う「シアター1」(56席)があります。シアター0もシアター1も、指定席ではなく自由席になっているのが、映画ファンにとっては嬉しいところです。気軽に気負わずに、映画鑑賞を楽しめます。
シアター内の客席には、フランスのキネット・ギャレイ社の椅子が使用されています。ふわりと体を包み込むような座り心地によって快適な鑑賞時間を過ごせると定評で、世界中の劇場やコンサートホールでも使われている高級品質のシートです。『前橋シネマハウス』でも、テアトル時代から数えると30年以上も長きにわたり使用されているにも関わらず、相変わらずフカフカの座り心地が魅力です。
そして5.1chで構成するサラウンドシステムが特徴。5.1chサラウンドはどんな音なのかを一言で言うと「臨場感のある立体的な音響」のことです。5.1という数字は、スピーカーの数を表しており、20Hzから20kHzのステレオスピーカーを前面中央、前方左右、後方左右にそれぞれ配置し(ここまでで5ch)、加えてサブウーファーという120Hz以下の低音強化用のスピーカーを0.1個として置き、5.1chというわけです。少々マニアックな説明ですが、もう少しわかりやすく表すと「聴く人を取り囲むように音を再生する音響システム」と言ったところでしょうか。こんなふうに家ではなかなか体験できない臨場感が味わえるのは、やはり映画館の良いところです。ちなみに、映画を鑑賞する際の音響はバランスが大切なので、3~5列目がおすすめだそうです。加えて映像のダイナミックさを味わいたい場合は、最前列も良さそうですね。
POINT
4. 子どもたちにも素敵な映画体験を
さて、これからの『前橋シネマハウス』ですが、支配人の日沼さんに伺ったところ、「食、自然、教育」の子ども向けの内容の作品の上映や、子どもに優しい側面を持った映画館を目指しているそうです。最近は、保育園のクラス単位で映画を観に来てくれることも増えているようで、映画館デビューが『前橋シネマハウス』という子どもたちも多いんだそう!今後は子ども向け上映会に力を入れていき、「映画を通して多様な価値観を育んだり、視野を広げてほしい」と語ります。
いわゆる商業映画や人気アニメではなく、親が本当に子どもに見せたい映画を月代わりでラインナップしてくれるなんて、ありがたい限りです。しかも、シアター内でのおしゃべりも出入りも自由だそうで、気兼ねなく子どもたちと一緒に映画を楽しめそうです。近年はサブスクの登場によって、映画館で映画を観るという経験が格段に減ってしまいましたが、子どもたちにも是非、大きなスクリーンで迫力のある映像を観る楽しさや、立体的な音響に包まれて映画の中の世界に没入するという体験をしてみてほしいですね。
▼クレジット
撮影/三木康史(troisdesign)
写真提供/前橋シネマハウス、写真AC
文/ERI
※motto vol.34「Da-iCE和田颯のハヤペディア」の記事を一部転載しています。
※掲載情報は取材時と変更になっている場合もあります。最新の情報は公式HP・SNS等にてご確認ください。
前橋シネマハウス
- [所在地]
- 前橋市千代田町5-1-16アーツ前橋上(3F)
- [TEL]
- 027-212-9127
- [営業時間]
- 9:30~上映終わり次第
- [定休日]
- 火曜
- [Web]
- https://maecine.com/