【レポート】ロックに胸をときめかせて。I ROCKSが築いてきた10年間。

こんにちは!motto編集部のオオウ(@ounco_coverdeath)です!音楽ってその時々の記憶とともにあったりしますよね。青春時代を思い出したり、季節を迎えると聴きたくなる音楽があったり。特に筆者の場合、フェスやライブで観た光景などは、色濃く残っていることが多いです。また、音楽からパワーをもらえることもありますよね。さて、今回は開催から2ヶ月が経過したLACCO TOWER主催の音楽フェス『I ROCKS 2024(アイロックス)』のレポートをお届けします。当日会場に足を運ばれた皆さんの記憶にはどのように刻まれていますか?ぜひ、思い出しながら読んでもらえると嬉しいです!また、今年足を運べなかったという皆さんは、来年開催される際の参考にしてみてくださいね!

1. I ROCKSの芯を見せた「故郷編」

開場の10分前、LIVING STAGEに登場したLACCO TOWERメンバー。スーパーファミコンのマリオカートで対決をし始める重田と真一。ドンキーコング擁する重田が真一のピーチを負かせる。続くストリートファイターⅡでもザンギエフ使いの重田に軍配が上がった。去年から登場したLIVINGは、このゆるさが醍醐味でもある。(去年の様子はこちら

会場の位置する伊勢崎市は2025年1月1日に新市誕生20周年を迎える。今年のI ROCKSは、伊勢崎市新市誕生20周年事業のキックオフイベントとして開催されていることもあり、「伊勢崎市公認テーマソング」として新曲「綾」のMV初公開も行われた。

臂(ひじ)市長は、「伊勢崎銘仙のように、これからもLACCO TOWERと手を取り合い連携していきたい」と語ると、会場からは拍手が沸き起こった。LIVING STAGEのライブでは、ゲストそれぞれの持ち曲に真一ジェットが加わったものと、LACCO TOWERの楽曲にゲストがフューチャリングする形で行われた。

「10年前の故郷編一発目も、そして今日も堀越颯太です。」KAKASHIなりの10年分の想いを詰め込んだ「20’s」を選曲。motto vol.25のインタビューで塩﨑が「バンドを組んだとき、重田の家が溜まり場になっていた」と語っていたが、「弥生」での仲良くセッションを楽しんでいる様は、まさに先輩の家に足を運んできた後輩のような光景だった。

【堀越颯太】セットリスト
1.20’s / KAKASHI
2.弥生 / LACCO TOWER


柿澤秀吉(秀吉|Vo&Gt)が抹茶クリームラテを片手にゆるりと登場。実際にレコーディングでも真一ジェットが参加しているという「光」をセレクト。コロナ禍前に制作された楽曲だが、筆者もこの楽曲に救われた一人。時間を経て、ひと回りもふた回りも楽曲が成長しているように感じた。「花束」では優しくも力強く歌い上げる柿澤らしい歌唱力が光った。

【柿澤秀吉】セットリスト
1.光 / 秀吉
2.花束 / LACCO TOWER


同郷(伊勢崎市)であることから「歩いて会場まで来ました」など地元トークに花を咲かせたのはアマダシンスケ(FOMARE|Ba&Vo)。「真一さんに弾いてもらいたかったんです」と語って演奏されたのは「LINK」。FOMAREらしい空間に染め上げた。また、かねてよりアマダ自身も大好きな楽曲と公言していた「薄紅」を披露した。

【アマダシンスケ】セットリスト
1.LINK / FOMARE
2.薄紅 / LACCO TOWER


「I ROCKSは一年で一番緊張するし、威厳がある。学校よりも成長させてもらっています。」と想いを語ったのは寺口宣明(Ivy to Fraudulent Game|Gt&Vo)ソロ名義からバンドでもリリースとなった切ないラブソング「この春に君がいる」を歌い上げた。寺口の表現力豊かな歌唱で魅せた「遥」では、オーディエンスの心を鷲掴みにした。

【寺口宣明】セットリスト
1.この春に君がいる / 寺口宣明
2.遥 / LACCO TOWER


先ほどお披露目になったばかりの新曲「綾」をアコースティックver.で奏でるといったプレミアムなステージとなった。袖では伊勢崎市PRキャラクター「くわまる」も音楽に合わせて身体を揺らしていた。MVでは伊勢崎市内のロケーションを切り取るなど、改めて末永く愛されていく楽曲に感じた。

【LACCO TOWER】セットリスト
1.綾 / LACCO TOWER


真一ジェットが見守る中、みなぎる闘志と緊張感が交錯する舞台袖。SEが鳴り始めるとともにアオモリの「やってやろうぜ!」とかけ声が響き、メンバー全員が素足でステージへ駆けていく。彼らの代表曲「センターオブジアース」で始めると、「群馬で一番うるさいバンド、youth!ラッコ先輩が自分たちのことを信じて呼んでくれました。2017年、高校一年生の頃に顧問に連れられて初めて来たI ROCKS。自分たちの信じているロックンロールが届けば良い!」と叫んだ。彼らなりの愛を込めた「36度の赤」を放ち、「ライブハウスがこういうフェスのステージに繋がってて欲しいと願います。またライブハウスで会おう!」と、ステージを後にした。

【youth】セットリスト
1.センターオブジアース
2.ウォールフラワー
3.36度の赤
4.インナーライツ
5.2001
6.新世界


「一番POPでCUTEに行くぞー!」この一年間で様々な変化があったオルフレ。コロナ禍で生まれて以降、市民権を得るなど成長を続ける楽曲「ヒーロー」をドロップ。フロアには無数の拳が突き上げられた。SNSをきっかけに広まった「相合傘」と現在進行形の彼らを詰め込んだセットリストを繰り広げていく。「俺らにとってI ROCKSは、一年間吐き出せなかったものをここで曝け出して、また次に取りに来るための場所なんです。」と、I ROCKSへの想いを吐露し、「イロカ」でラストを締め括った。

【oldflame】セットリスト
1.ヒーロー
2.相合傘
3.ラストシーン
4.告白
5.イロカ


18〜19歳の頃に初出場を果たした20&21以来の登場となったジェントル。リハーサル時には、塩﨑が「音響が違うから体感して!」、大介が「時間の使い方も大切にね!」と声をかける様子があった。全方位のポップネスでフロアを一気に掌握していく「Starlight」。「LACCO TOWERがどんな状況でもI ROCKSを続けてくれたから、自分たちもバンドを辞めませんでした。I ROCKSで歌うために作ってきた曲です!」と語り、披露されたのは「スペースダイバー」。ど真ん中を撃ち抜くポップさがありながらも、心地良い疾走感溢れるロックチューン。急成長を続ける彼らの今後がさらに楽しみになった。堂々たるステージングでフロアを大いに盛り上げ、トリのLACCO TOWERへとバトンを繋いだ。

【The Gentle Flower.】セットリスト
1.Yellow
2.Starlight
3.ゆめのなかで
4.Y
5.スペースダイバー


時刻は21:01:17。SE「狂想序曲」が流れ始めると、オーディエンスが目を輝かせながらクラップする様子はいつ見ても胸が高鳴る。

10周年、ネクストフェーズを迎えた彼らが一曲目に選んだのは「夜明前」。次へのステップを踏み出すのに相応しい楽曲だ。ふと目をやると、塩﨑のアンプの上にはザスパ群馬のJ3→J2のタオルがかけられている。

開催前の対談で塩﨑が、「10年も続けていれば様々なことがあって、本当ならここにラインナップされるべきバンドやライブハウスの名前がなくなっていたり。」と語っていたように、彼らがI ROCKSとともに歩んできた10年間、様々な出会いや別れがあった。

そして、その過程で出会ってきた大勢の仲間たちがステージの袖から彼らの姿を目に焼き付けている。

途中、機材トラブルにも見舞われたが、持ち前のライブ力で吹き飛ばしてくのも彼ららしい。ステージでは「苺」「竜巻」など新旧織り交ぜたセットリストが繰り広げられていく。

「10年前、群馬のバンドたちだけで始めた故郷編。当時は空席だらけだったけど、そんなことよりも、俺は始められたこと自体が良かったと思っている。この中に自分がやっていることに結果が見えず、自信が持てていない人もいるかもしれないけど、そんなこと気にしなくていい。自分がやっていることに誇りや自信を持て!ここに帰ってきたら、誰よりも力強く“おかえり”って言ってやるから!」

筆者もライブ中に放たれる松川のMCには何度も救われてきた。台本が用意されているわけでもなく、ライブの中で生まれてくる感情をストレートに届けてくれる、フロントマンならではの言葉だからなのだろう。またここに帰ってくる理由の一つになっている人も多いのではないだろうか。

【LACCO TOWER】セットリスト
1.夜明前(左)
2.苺(左)
3.奇妙奇天烈摩訶不思議(右)
4.竜巻(右)
5.白(左)
EN.灯源(左)
※()はGt.細川がプレイした持ち手

終演後、大忙しでステージ上の機材移動が始まる。時刻は22:00を回っているが、彼らはこれからI STAGEで翌日のリハーサルをするのだという。準備も然り、初日を終えたばかりで疲れ切っているはずなのに、どこまでもタフな姿に尻を叩かれる気持ちになった。そして、塩﨑は「地元の若手が集まっているんだから顔出さないわけにはいかないでしょう!」と、打ち上げにまで顔を出し絆を深めた。

2. 想いが溢れ出たそれぞれの30分

去年はI STAGEで特別編成での出演を果たした秀吉が、スリーピースでYOU STAGEに帰ってきた。「I ROCKSが原動力」と語り放たれたのは「きたない世界」。以降、最近の楽曲を多めにしたセットリストを展開していく。ラストも新曲「きみにあいてえ」を披露するなど、常に上昇志向の姿勢が伝わってきた。結成20周年を迎え、「今の秀吉が一番かっこいい」そう思ったオーディエンスも多かったのではないだろうか。

【秀吉】セットリスト
1.きたない世界
2.ダグアウト
3.あたまがいたいよ
4.歩こう
5.桃源郷
6.きみにあいてえ(新曲)


「2014年にback numberがI ROCKSの一音目を鳴らしてから、また彼らがここに帰ってくるまでこの曲をかけ続けます!」と、いわせが選んだのは「高嶺の花子さん」。のっけからフロアには大勢のオーディエンスが押しかける。「刃 / THE BACK HORN」では、スベリィと息の合ったパフォーマンスで笑いを取り、くす玉を割って10周年を彼らなりに祝った。盟友として何度もステージに立ってきた「SUPER BEAVER」の楽曲がかかるとフロアのボルテージは最高潮に。入場規制もかかるなど、改めてI ROCKSに欠かせないピースであることを証明してみせた。

【DJガッツいわせwithスベリィ・マーキュリー】セットリスト
1.高嶺の花子さん / back number
2.きちゅねのよめいり / -真天地開闢集団- ジグザグ
3.チャイナタウン / パスピエ
4.スパイシーマドンナ / BRADIO
5.夏のトカゲ / TOTALFAT
6.林檎 / LACCO TOWER
7.刃 / THE BACK HORN
8.切望 / SUPER BEAVER
9.ハリー&マヒル / MINMI


The Gentle Flower.の面々に「見届けます!」と激励をもらいステージへ向かう3人。一年前とは大きく異なる景色。昨年末、オリジナルメンバーの齋藤(Gt.)が脱退し、3人体制となった彼ら。「first」「エターナルフォースブリザード」「ドブネズミ」とパンキッシュな楽曲を連発。堀越は、「10年を経て、遠かったラッコとの距離感がようやく縮まったと思う。その反面、当時は思ってもみなかった先輩たちの苦労の部分が今では分かるような気がする。」と話し、代表曲「ドラマチック」で締め括った。もうI ROCKSのステージでその姿を見られないかもしれないという不安を吹き飛ばす、彼らの本気の覚悟を見た。熱気と心を打つ新生KAKASHIに胸が躍らずにはいられない。

【KAKASHI】セットリスト
1.本当の事
2.first
3.エターナルフォースブリザード
4.ドブネズミ
5.friends
6.変わらないもの
7.ドラマチック


嵐の前の静けさとでも言おうか、静寂に包まれるステージ袖。徐々に盟友たちが集まり始め、順にハグを交わすメンバー。

「林檎」「狂喜乱舞」「傷年傷女」と立て続けにフルスロットルで縦横無尽にステージやフロアを駆けずり回る様子は狂想演奏家そのもの。真一とセッションを楽しむスイッチギタリスト細川、袖で見守る盟友たちに拳を向ける塩﨑。時折メンバーを眺めながら笑みが溢れる重田。

当日は桜の開花予報が伸びたこともあり、会場の周りにも桜が咲いていた。この日に演奏された「薄紅」は、その景色を目に焼き付けるには十分すぎるほど印象深かっただろう。

松川は、「自分たちが心からカッコ良いと思った人たちだけにオファーしているし、このステージを作り上げている人たちもみんな知っている。そして、ここをみんなが帰って来られる家にすること。I ROCKSで決めていることはそれだけ。」と語った。

アンコールに選ばれたのは「愛情」。ラッコの楽曲は良曲が多いので眠らせておくのはもったいないと個人的に感じている。こうして既存曲の中からセットリストに戻ってくるのはオーディエンスも喜ばしいことだろう。

【LACCO TOWER】セットリスト
1.林檎(左)
2.狂喜乱舞(右)
3.傷年傷女(左)
4.鼓動(左)
5.薄紅(右)
6.綾(左)
EN.愛情(左)
※()はGt.細川がプレイした持ち手


DAY3に登場したのはアイビー。開催前の対談でカワイが「当日はサポートで仲道さんに弾いてもらえたら嬉しい」と語っていたように念願が叶った。会場全体を包み込む「泪に唄えば」でスタートしたかと思えば、オルタナ節全開で配信リリースされたばかりの「(night)/ light」も披露。初開催となった2014年、オーディエンスに衝撃を与えた「青写真」も組み込み、青も赤も凌駕するセットリストを展開していく。ボーカリスト・寺口が際立つ「WONDER LAND」も挟み、10年という月日でのバンドの成長をこれでもかと見せつけた30分となった。

【Ivy to Fraudulent Game】セットリスト
1.泪に唄えば
2.(night)/ light
3.青写真
4.WONDER LAND
5.革命
6.Memento Mori


地元・伊勢崎の若き英雄がI ROCKSに帰還。音出しの「Continue」のままライブに突入するかと思ったが、一呼吸置き、アマダのMCから始まる。初めて出演したフェスが8年前の「I ROCKS 2016」で、思い入れのイベントであることを語り、社会的にも様々なことがあった8年間を振り返る。「そんな状況の中でも、続けてくれたI ROCKSに救われました」と感謝を伝えた。彼らなりの地元を歌った「夕暮れ」で幕を開ける。続いて「SONG 」では、「ねぇお前らラッコ好き?当たり前だろラッコ好き!」といったコールアンドレスポンスも飛び交った。「ライブハウスにしていこうぜ!」の合図とともに「Frozen」へ突入。ライブに育てられた楽曲「愛する人」ではオーディエンスが分け隔てなく肩を組み、シンガロングする様子に思わず涙がこぼれた。セオリー通りにはいかない組み立て方が憎くも、そこがまた彼らの良さであると改めて感じた。

【FOMARE】セットリスト
1.夕暮れ
2.SONG
3.Frozen
4.夢から覚めても
5.優しさでありますように
6.愛する人


ステージ袖には円陣が組まれ、「今年もI ROCKSお疲れさまでした!エモよりも楽しく、そんなライブを皆さんに届けましょう!」と、掛け声が飛び交う。

最終日の一曲目に届けたのは、ここからまた一年家を出ていくオーディエンスへ向けた「未来前夜」。そのまま盛り上がり必至のアグレッシヴな楽曲「竜巻」「火花」と畳み掛け、無数の拳が突き上げられた。

心置きなく声出しも可能となった会場には、「雨後晴」やレア曲「ラッコ節」で、大きなコール&レスポンスが続いた。会場の一体感が最高潮を迎えたところで最後に披露されたのは「一夜」。あっという間の3日間がまもなく終わろうとしている。

ほとんどの楽曲をレフティで弾き倒したスイッチギタリスト細川は、「自分はなんて不幸なんだって思うことの方が多いけれど、I ROCKSはみんなに精一杯“ありがとう”を伝えられる場所だと思います。」と、感謝の気持ちを伝えた。

重田は「足を運んでくれた人もスタッフも出てくれた仲間たちも、みんな本当にありがとう。盟友たちのライブを観ながら、出演してくれたみんなと初めて回ったツアーや出会った日のこととか全部思い出しました。」と振り返った。

「今日ほどLACCO TOWERの一員であること、I ROCKSを開催できて良かったと思った日はありません。メンバーの目が行き届かなかった人たちもたくさんいると思うので、みんなでありがとうを言おうか!サンキュージェッツ!」と真一らしい笑いを誘った。

塩﨑は「生まれる場所や親は選べないけど、どちらにも意味があると思っていて。俺はいつも自分で決めることができない人間だったんだけど、I ROCKSに関しては開催することや出てもらうバンドのブッキングなどを決められたんだよね。だからI ROCKSだけは、これからも続けていきたいと思っているよ。引き続きよろしくね!」I ROCKSを始めた頃のことを語った。

「I ROCKSがみんなの家のような存在だって謳うようになって、メンバーには言えなかったけど、家ってそんな簡単なものじゃないし正直それで良いのかなって思ってました。自分の親が病気で倒れたり、子育てが上手くいかなかったり、家の中では良いことばかりじゃないでしょ。だから本気で“家”と謳うことを悩んだけど、俺らが全部受け止める場所にするから、I ROCKSはとことん甘ったるくていいし、何も心配ごとなんて要らないよ。でも、今日が終わったら、また明日から“いってらっしゃい”だからな。来年もここに帰ってこいよ!」と、松川は訴えかけた。

アンコールで披露された「星空」では、出演者が総出でステージに上がった。フロアには満面の笑みが溢れかえり、まるで満点の星のように輝いていた。「I ROCKS 2024、3日間ありがとう!また来年会いましょう!いってらっしゃい!!」と叫び、5人はステージ上で抱き合った。楽しそうに演奏する5人を見て微笑ましく思えたが、やはり涙を堪えることはできなかった。

【LACCO TOWER】セットリスト
1.未来前夜(左)
2.竜巻(右)
3.火花(左)
4.綾(左)
5.雨後晴(左)
6.ラッコ節(左)
7.一夜(左)
EN.星空(左)
※()はGt.細川がプレイした持ち手

3. 盟友たちが奏でる10年間の軌跡

タイムテーブルが発表された際、DAY2とDAY3のトップバッターに『BLUE ENCOUNT』『THE BACK HORN』といった面々が割り充てられていることもあり、SNS上がざわついた。裏を返せば、最初から最後まで楽しんでほしいというホストからのメッセージとも受け取れる。

念願の出演が叶ったモンスターバンド『BLUE ENCOUNT』が登場。のっけから「囮囚(ばけもの)」を投下したかと思うと、田邊(Vo&Gt)はフロアに降り立ち、会場全体を熱狂の渦に巻き込む圧巻のパフォーマンスを披露する。その熱気に汗だくになり上着を脱ぎ出すオーディエンス。ラストには「灯せよ」で「灯せよ 希望を」と歌に乗せ、10周年への祝砲を放った。地元・岐阜にてフェス「OOPARTS」を主催する『cinema staff』が登場。スマッシュヒット曲「great escape」など、迫力のある轟音を背景に、飯田(Vo&Gt)の美しい歌声が会場に響き渡った。嵐の如くやってきた盛り上げ隊長『FLOW』は、「ドラゴンボールZ 神と神」の主題歌「CHA-LA HEAD-CHA-LA」、「GO!!」とキラーチューンを連発。さらにオーディエンスを使い、会場にビッグウェーブを巻き起こした。

結成以来、様々な苦難を乗り越え環境の変化を経験してきた『LEGO BIG MORL』。ポップなメロディーセンスが光る「RAINBOW」や日常を描いた「愛を食べた」など、オーディエンスの心を掴んでいった。レペゼン福岡県久留米市の『THE FOREVER YOUNG』が初登場。オーディエンスは人間味溢れる楽曲の数々に拳を突き上げ、泣き、そして笑う。「俺らも地元を愛しているから、LACCO TOWERの地元であるここ伊勢崎に招いてもらえたことが心から嬉しいし、それがどんなことを意味しているかも伝わっている。付き合いは短いけど、地元を想うソウルメイト!」と、クニタケ(Vo&Ba)が目線を送る先には微笑む重田の姿があった。終盤で放たれた「WORLD END」にこそ、パンクバンドの希望の光を感じずにはいられない。個人的にLACCO TOWERと『9mm Parabellum Bullet』の対バンが観たいと思い続けて長い年月が経ったが、ついに両者がI ROCKSで交わる。「名もなきヒーロー」「インフェルノ」と、様々なジャンルの音楽を昇華したサウンドに昭和歌謡を感じさせるボーカルが乗る。10年ぶりの来群、そして初出演を踏まえ、「仲間に入れさせてくれますか?」と謙虚に出る菅原(Vo&Gt)。終盤、滝(Gt)の超絶ギタープレイも炸裂し、しっかりとオーディエンスの心に火をつけた。

8月に日本武道館ワンマンライブを控える『TETORA』。こちらも初登場だ。上野(Vo&Gt)の心を揺さぶるエモーショナルな歌声とそれを支えるいのり(Ba)、ミユキ(Dr)のパワフルなサウンドが、また一つI ROCKSの新境地を開いた。今年2度目の出演を果たしたアーティスト同様に、彼女たちの次回出演が楽しみになるライブとなった。2016年ぶりの出演となった『My Hair is Bad』。椎木(Gt&Vo)の「みんなでLACCO TOWERまで繋げるぞ!」とともにドロップされたのは最新作「太陽」。「LACCO TOWERの力になりにきたぞー!」と続けたのは「アフターアワー」。フルスロットルで「真赤」「熱狂を終えて」のコンボ、そして椎木からアドリブで紡ぎ出されるリアルな言葉の連続「フロムナウオン」へ。空白の8年間を埋めるのには十分すぎる30分となり、最高の形でバトンを繋いだ。YOU STAGEのトリ、前方プレミアムエリアの待機列には人がずらり。I ROCKSの『Rhythmic Toy World』は観ておきたいというオーディエンスの期待の大きさが表れていた。「CHAMPION ROAD」や「僕の声」など、彼らの楽曲はいつだって背中を押してくれる。ラストの「青と踊れ」では、熱量が幾重にも増す内田(Vo&Gt)の歌声とバンドアンサンブルに涙がこぼれ落ちるオーディエンスの姿も。


結成25周年を迎えた『THE BACK HORN』が登場。代表曲「罠」、オーディエンスや盟友LACCO TOWERへ捧げる「最後に残るもの」、Instagramからリバイバルヒットによって世界的に広まった「コバルトブルー」を立て続けに放った。山田(Vo)は、「I ROCKSは生半可な気持ちじゃできないイベント」と語ると同時に、出演できる喜びを噛み締めた。共鳴し合う2組の関係性も垣間見えるオープニングとなった。岡本(Vo&Gt)の「はじめまして、群馬!I ROCKSよろしくお願いします!」という元気な挨拶から始まった『ammo』。何と言っても彼らの魅力はスリーピースならではの力強さ。言葉をストレートに届けるサウンドの「何℃でも」、日常に寄り添う「寝た振りの君へ」など、ライブハウスで培われた確かな実力を武器にショーを繰り広げた。「幸せになる準備できてるー?」PON(Vo&Gt)がオーディエンスに向かって投げかける。『ラックライフ』もまた、I ROCKSにおいて欠かせないピースとなっている人も多いだろう。いってらっしゃいとただいまが飛び交う家で『ircle』への想いが溢れ、彼らの名前を呼ぶ。笑顔と涙顔が入り混じる多幸感溢れるフロアとなった。

心を震わせる声色が鳴り響くYOU STAGE。『片平里菜』が今年もI ROCKSの歌姫としてステージに帰ってきた。真っ直ぐな眼差しで歌うのは「予兆」「ロックバンドがやってきた」など、メッセージ性の強い最新作「Redemption」から多めの選曲。日常の「幸せ」や大切なことに気づかせてくれる歌の連続に思わず聞き入ってしまった。I ROCKSきってのパーティー番長『BRADIO』が登場。初手、キラーチューンの「Flyers」「69 Party」を投入すると、あっという間に会場をダンスホールに変えて見せる。細川も惚れ込むファンクでソウルフルな彼らの楽曲はこのフェスにおいて唯一無二の存在感を放つ。鳴り止まない拍手からも見て取れる、ホームに変えてしまうエンターテイナーっぷりを魅せつけた。今年も吠えたのは、ジャンルの壁を壊しメロディックパンク旋風を巻き起こした『Dizzy Sunfist』。去年よりも多くのオーディエンスを前に、「Someday」「FIST BUMP」などディジー節全開の楽曲を並べる。パンクロックを主戦場とする彼女たちにとっては、少なからずアウェイな現場ではあるものの、そんな心配を吹き飛ばす熱量のあるライブを展開。その証拠に「The Dream Is Not Dead」 では無数の拳が突き上げられていた。

2024年5月の「HUMANisM~超★地獄編2024~」をもって無期限活動休止に入ることがアナウンスされていた『ircle』が登場。一曲目に選んだのは河内(Vo&Gt)の歌声がオーディエンスの琴線に触れる「あふれだす」。築き上げた彼らなりのロックンロールを並べ、ラストには様々な感情が入り混じる「本当の事」をドロップ。昨年は、『goodtimes』がバンドとして最後となるI ROCKS出演を終えた(I ROCKS BASEでの2公演が決定!)。出会いや別れ、そして再会まであるのがこのフェス。彼らの帰りをいつまでも待ちたいと思う。2年連続の出演を叶えた『kobore』。彼らの楽曲は、リスナーの共感を呼ぶストレートな言葉が並ぶ。ツービートが光る「HEBEREKE」では痛快なサウンドで駆け抜けた。I ROCKSに刺激を与えるスパイス『忘れらんねえよ』。「塩﨑!啓示!」のコール&レスポンスが飛び交う。「俺よ届け」「アイラブ言う」といったキラーチューンを連発。「I ROCKは毎年フルアルバムを作るようなもので、その大変さが身に染みてわかるし、その表現に参加させてもらえていることが嬉しい」と語った。唯一無二の存在感を放つロック界の奇行師『アルカラ』が登場。「水曜日のマネキンは笑う」、LACCO TOWERの「薄紅」カバーを披露するなど、最高の形で大トリにバトンを繋いだ。

10周年を終え、集う盟友たちのライブを眺めて感じたことがいくつかある。まずは、重田の言葉にもあったように、どの出演者にもLACCO TOWERが築いてきた軌跡やその片鱗を垣間見ることができた。音楽性、精神性、活動。いわゆる「大人の事情」のようなものを排除してきたからこそ、アーティスト同士のピュアな部分で繋がっているのだろう。

音楽作品がアルバム全体を通して聴くだけでなく、曲単体で聴かれるようになってからしばらく経つが、アーティスト主催であるI ROCKSというフェスのやり方は、「良い作品できたんで、全曲通して聴いてね!」といった感覚に近いものを覚える。群馬の若手バンドがステージに立とうが、フロアには大勢のオーディエンスが待っている。彼らがライブハウスの精神はそのままに、枠を取っ払って活動を続けてきたからなしえる光景だと思う。

もう一つ、ライブや会場の様子を見て回りながら感じたのは、誤解を恐れずに言えば、「文化祭」のような温もりと高揚感を覚えたこと。痒いところに手が届く、オーディエンスを楽しませようという心意気に溢れていて、会場全体に手作りの温かみがある。アーティストたちも出演して終わりではなく、仲間のライブを観たりケータリングを手に取ったり、打ち上げに残って親睦を深めたりとフェスを丸っと楽しんでいた。オーディエンスも各々が伸び伸びと自由にフェスを堪能している様子は見ていて気持ちが良かった。どこか伊勢崎というローカルな場所で開催されていることも含めて、絶妙にマッチしていると思う。アーティスト主催ゆえ、手作り感も大切にしているロックフェス。「I ROCKSにまた帰ってきたい」と語る出演者やオーディエンスが多い理由はそこにあるのかもしれない。

4. 僕らのロックは続いていく

I ROCKSが終幕してから程なくして、5年ぶりとなる草野球チーム「背脂飯ーず(塩﨑と重田を中心に音楽経験者で結成された団体)」の活動が行われた。対戦相手には群馬の今後を担っていくであろう若手バンド連合軍。打ち上げではそれぞれが混じり合い、音楽活動についての意見交換も行われた。塩﨑が後輩バンドたちにアドバイスをする様子も微笑ましかった。I ROCKS開催当初にステージに立っていたバンドも、今は解散や活動休止をしているものも多い。当時のように、音楽で一つになれる世代が再来したと思うと嬉しくなった。

そして、筆者は高崎のライブハウス「GUNMA SUNBURST」が主催となって行った「SUNFES」にも足を運んだ。「youth」「サテライト」など、草野球に来ていた面々もラインナップされていた。バンドと共にカルチャーを守ろうとする、愛のこもった素晴らしいイベント。ライブハウスからフェスへ、フェスからライブハウスへ自由に楽しむ人で溢れかえったらきっともっと面白くなる。「山人音楽祭」「New Acoustic Camp」「TAKASAKI CITY ROCK FES.」「GFEST.」「MACHIFES.」「ZODIAC FESTIVAL」など、群馬では様々なフェスが開催されている。今年は「FOMARE大陸」も2年ぶりの開催を控えている。多種多様な形態のイベントに自ら足を運ぶアマダの姿を心強く思うし、ホストとして良いイベントにしたいという気持ちが伝わってくる。カルチャーを大切にしてきた彼らが作り上げる遊び場を応援したいと思う。

先日の対談で、大伸(The Gentle Flower.|Vo.)が語ってくれたように、それぞれが想いを持って、イベントやフェスに出演を決めていると思う。だからこそ、音楽的な部分だけでなく、心でも繋がっている。そしてそれを体現するカルチャーが群馬には根付いている。何度も言うが、その延長線上に様々な音楽フェスやイベントがあるし、I ROCKSもまたその一つ。

今年、新曲として披露された「綾」はI ROCKSそのものを示しているようにも感じた。伊勢崎銘仙をイメージし、二つの絹糸を交互に織って強度を高める銘仙にちなみ、人と人が出会いによって絆を強めていく様子を表現しているからだ。

「綾」
はじめは頼りなく か細く色もない
引っ張ると千切れそう だから そっと持ってて
集めていくの確かめるように
君の分と 僕の分と 同じだけ
ゆっくりと
重なって もたれ合う日々に ごめんねと言って 君は泣くけれど
それでいいと思う 幾重に繰り返し
強くなる「弱さ」
不確かで 脆くても 愛し合う
こっちの悲しみも そちらの悲しみも
気が付けばどのくらい 重ね合ってきたかね?
はじめは頼りなく か細くものだけど
いっそ未来も心配ないと言えそうなの
独りだけでは 消えちゃう だから
手繰り寄せて 巡り合えて 本当よかった
誤って 傷つける度に しまったと言って
君は泣くけれど
それでいいと思う 間違い絡まって
強くなる「弱さ」
重なって もたれ合う日々に ごめんねと言って 君は泣くけれど
それでいいと思う 幾重に繰り返し
強くなる「弱さ」
不確かで 脆くても 愛し合う
何度でも 重ね合い 脆くても 愛してる

言うまでもなく、10年前の景色とは大きく異なる。ステージからのそれに限らず、ステージをつくる仲間たち、見守るスタッフたち、足を運ぶオーディエンスたちも含めてだ。それぞれの想いが重なり、音を束ねていく。これからも続いていくロックの現場を楽しみにしつつ、I ROCKSがその橋渡し的なイベントとしていつまでも続いていくことを願いたい。

LACCO TOWER結成22周年&三部作完成記念公演「独想演奏会 〜竜巻・綾・無有病〜」
7月15日(月・祝)@東京Zepp Shinjuku(東京都)
※ワンマンライブ
※会場限定盤「有無同然」の販売&特典会も実施!

LACCO TOWER presents 「Me Three」
9月15日(日)@名古屋CLUB QUATTRO(愛知県)
9月16日(月祝)@梅田CLUB QUATTRO(大阪府)
9月23日(月祝)@渋谷CLUB QUATTRO(東京都)
w / BRADIO / ラックライフ

PROFILE
LACCO TOWER(ラッコタワー)
2002年、伊勢崎市出身のメンバーを中心に結成。2015年『日本コロムビア(トライアドレーベル)』よりメジャーデビュー。「ドラゴンボール超」「ザスパクサツ群馬」「伊勢崎オートレース」など、数々のタイアップソングを手がけるほか、地元である群馬県にて2014年からロックフェス『I ROCKS』を主催している。
[WEB]http://laccotower.com/
[X]@LACCO_TOWER
[Instagram]@laccotower_official

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▼クレジット
出演/LACCO TOWER
撮影/鈴木公平、藤川正典、藤村聖那
写真提供/I ROCKS、田中裕也
文/佐々木覆(troisdesign)

※掲載情報は取材時と変更になっている場合もあります。最新の情報は公式HP・SNS等にてご確認ください。

【レポート】ロックに胸をときめかせて。I ROCKSが築いてきた10年間。

[所在地]
伊勢崎市昭和町3918(メガネのイタガキ文化ホール伊勢崎)
[TEL]
0270-23-6070
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